いのちの理由
「生んでくれてありがとう」「立派に育ってくれてありがとう」そんな言葉が贈られる結婚式ですが、今日のご結婚式では特に、家族のつながりを感じさせられるエピソードがありました。
今日は新郎・新婦のお子様の1歳の誕生日。誕生1年目というかけがえのない日に、お子様お披露目も含めて大切な皆様に感謝の気持ちを伝える結婚式をしたい。それがお二人の結婚式に対するお気持ちでした。
披露宴の終盤、すべての進行が終わると、新婦からピアノの弾き語りで家族にその想いを伝えられました。ピアノは、小さい頃に亡くなられた新婦のお母様が教えてくれたもの。支えてくれたお父様に、見守って下さっているお母様に、お母様の分まで育ててくれた祖父母さまに、そして二人が愛情を注ぐ愛娘に。
「生んでくれて、ありがとう。」「愛情をたくさん注いでくれて、ありがとう。」
想いが溢れて震える声で、指先で、一生懸命伝えていらっしゃいました。お父様もそっと周りに気付かれないように涙をぬぐわれているご様子。
そして演奏が終わると、今度はそのお父様が静かに立ち上がられました。実は、10日ほど前に、お父様から二人にあてた手紙を読んで欲しいと、ヴィクトリアでお預かりしておりました。
「幼いときに母さんを亡くしたにもかかわらず、涙一つ見せずに明るく振る舞ってくれた、それがオトンにとって何よりも心の支えになったよ。」そうはじまったお父様の手紙は、「どうか幸せになってほしい」そんな愛で溢れていました。
あなたが生まれたのは、父に会うため。母に会うため。兄弟に会うため。友人に会うため…。そして、幸せになるため。誰かを救い、幸せにするため。
新婦が演奏で贈られたお気持ちと、お父様が贈られたお気持ちと、周りの皆様のお気持ちが重なった瞬間でした。
初めてお二人がヴィクトリアにいらしてから、今日を迎えるまで寄り添わせて頂いた私たちですが、改めて、今日という結婚式で示される新婦の、新郎の、そのご家族の生きてきた証しを感じました。父から娘へ、二人へ、そして二人が愛する娘へ。
結婚式には、その人の「いのちの理由」をあらわせる、そんな力があります。